詩蒐はまだ終わらない

 詩というカタチで、呟き、叫び、疾る (再びコチラに引っ越しました)

食す権利

飢餓状態のおんなの子
肉が薄いから
吹く風は骨に当たり音がする
キシキシキシキシキッキッキッ

目はギラついてハイテンション
時折倒れて眠りを貪り
突然裸足で道路を疾走する深夜

嬌声をあげ笑い転げて 涙少々
乾きすぎた皮膚は水を吸わない
チリチリヒリヒリ塩水がつたうのみ

ザンバラ髪に雀の巣ふたつ
きのうは風呂で吊るされた
見えない傷で星座を作ろか

腹だけ丸いおんなの子
食卓は法廷
被告人の喉はカラカラ
わずかなご飯が飲み込めない

遠い国のことでなく
隣の町のことでなく
それはわたしのお話で
普通のお家のお話で

食卓には色とりどりの料理
白い歯を見せて笑う父
美しい母の髪は艶やか

被告人のわたしは俯き
目だけをキョロキョロ右左
間隙を縫って盗み食い
キュウリをポトリと落としたら

雷鳴が轟き食卓が揺れ
法廷は刑場となった

雷光が映す
父は不動明王
母は般若に

怒号は聞き取れない
手の甲も頭も頰も
嵐の中で何かに打たれ
痺れた身体は言葉を持たない

罪状も罰条も
ガーガーゴーゴーキーンキン
耳の中でハウリング

ああ そういえば
おととい母が宣告してた
わたしには
食す権利がないらしく
あらゆる権利がないらしく
愚かなので醜いので
生きる価値もないらしい

わたしはいつも飢餓状態
ガリガリガリと空の皿を掻き
欲しているのは食なのか
飢えているのは愛なのか

生きたいのか
死にたいのか
内臓は生きたいが
脳が死にたいとつぶやく
眼球は狂って走り回る
右手がポロリと零した言葉
コロソウカ
左の指が右手を抑える
マダハヤイ

喉の奥で真っ黒な塊りが
九年待てと囁いた
十五になるまで
死なない程度に食っておけ

嵐に身を任せていると
上も下もわからなくなる
ぐるりぐるりと回る世界
ガンガンガンと頭が鳴って
嵐が止めば打ち捨てられた

記憶をなくして眠るだけで
寒さに震えて眠るだけで
夢の中 血を吐き叫ぶ声は
骨に響いてカラカラ鳴って
高周波が脳味噌をかき混ぜるから
バラバラ屍体になりたくなる

今日も一日食べてない
明日は何かありつけるかな
空腹はもうずっと感じない
だから大丈夫ツラくない

骨に皮が張り付いて
腹だけ丸いおんなの子
知らない人がくれた飴
笑え 媚びろ へつらえ
これで三日生きられるだろう

普通のお家と思っていた
普通のお家に住んでいた
犬を乗せて車でドライブ
その時だけの綺麗な洋服
必死で作る笑顔は硬質

権利を持たずに育つ子は
脳も身体もアンバランスで
転んでばかりの人生を過ごす
痛みは忘れた頃にきて
そこかしこでのたうち回る

生まれた時に
コロシテクレレバ
ヨカッタノニ