詩蒐はまだ終わらない

 詩というカタチで、呟き、叫び、疾る (再びコチラに引っ越しました)

あの日喪ったもの

三月がくるたびに
喪失感が身体中を蝕む

あの日
故郷にあった無人の家を
津波がさらっていった後
樹々や土が毒に侵され
水も穢されてしまった

人々は
誰も死なずに幸いだった
そう言うけれど
私にとっては
母が死ぬのはどうでも良いが
あの風景がなくなったのは
帰る場所がなくなったこと
わたしの心が死んだも同じ

私の脳はイレギュラー
両親の席がない
保護者の席がない
代わりにあるのが
あの海の風景

つらい時思い出すのは
寂しくても平和だった
あの景色
殴られもせず
蹴られもせず
罵声も浴びせられなかった
あの村での静かな日々

帰りたくて帰りたくて
でも帰れなくて
拗らせてしまったホームシック

その景色が亡くなった
土地は死んで
風景は変わり果てた

たった一つの
私のよすが
時が止まった
静かな海辺の村だった

誰にも理解されなくて
私の孤独は深まって
絶望の中に落ちていった