詩蒐はまだ終わらない

 詩というカタチで、呟き、叫び、疾る (再びコチラに引っ越しました)

背高泡立草の色彩と影

 背高泡立草の群生が原っぱを黄色に染め上げている。原っぱは黄色で充満している。
 ここ十年、秋でも初冬でも生温い風が吹いている。生温い風に飛散する黄色は、涼風に吹かれていた頃とは印象がかけ離れている。

    それは黄色い悪夢だ。
    むせ返る程の悪夢だ。
    肌に張り付く悪夢だ。

 小さな私が慎重に呼吸をしてくぐりぬけた、あの、輝く原っぱとは別のものだ。

    なんと暴力的な黄色
    なんて品性なき黄色
    なんの情もない黄色

 かつては秋風に美しく波打っていたというのに。なぜ背高泡立草の群は演出を変えてしまったのだろう。それとも観客の感性が鈍ったのか。観客を喪った時期が長すぎたのか。

    ただひたすらと黄色
    べったりとした黄色
    知性を持たない黄色
    ガサツが過ぎる黄色
     乱雑で粗暴で生温い

 つと、太陽が山際に向かい、黄色の群れを西から照らした。

    影になった黄色
    朱をのせた黄色
    金を纏った黄色
    淡光を放つ黄色
     輝く黄金色のグラデーション

 日差しはじきに消えるだろう。風も少しだけ温度を下げた。
 陽が落ちて、山の端が夕暮れの余韻を残す、僅かな刻。背高泡立草の群れは、かつてとはまた違った叙情を体現するだろうか。

 無邪気な私の影を見つけるために、あと少し。私はお前たちの美しい刻を待とう。