詩蒐はまだ終わらない

 詩というカタチで、呟き、叫び、疾る (再びコチラに引っ越しました)

ビルの上から

少年はビルから落下した

高層ビルに囲まれて仰げば
魚眼レンズで見ているようで
空は小さく遠くにあって

雑踏の中で立ち止まる私を
肩で突き飛ばしたサラリーマン
バッグをぶつけた女子大生
通りすがりに舌打ちひとつ

転んで座り込む私を
レンズの向こうの知ってる誰かが
嘲笑いながら覗いている
沢山の足が目の前を通過していく

呼吸が浅く苦しくなって
広いところへ逃げ出したくて
よろよろ体を引きずって
高層ビルの屋上を目指す

屋上には柵がぐるりと廻らされ
制服姿の監視員が睨んでる
死に場所を求めてきたわけじゃない
息をしに来ただけなのに

白々しく晴れ渡る空は
少し近く大きく見えて
それでもまだまだ遠くって
何故だか飛びたくなってくる

ビルの上は風が強くて
どこへ落ちるかわからない
くるくると翻弄されてどこへゆく

上昇気流に乗って
だんだん薄く透明になり
青空に吸い込まれたなら
もしかすると理想的

監視員の視線が強くて
思索も妄想も砕け散る

東京には
心を休める場所がない
己の命もままならない

少年は落下してゆく間に
何を見ただろうか
窓に反射する光か
空に抱きとめられる夢か

少年はあるいは私かもしれない