詩蒐はまだ終わらない

 詩というカタチで、呟き、叫び、疾る (再びコチラに引っ越しました)

知らない私を想って

死体のふりして
ベッドに横たわっていた
何故かしら
けずり回りたい衝動
何もかも壊して回りたい
暴力的な衝動が
私の内から湧き上がり
部屋の中をピョンピョンねた

自分があまりに恐ろしく
私は自分の髪を切った
坊主になるまで切り続けた
これなら外に出られない
出ても通報されるだろう
誰かを傷つけてしまう前に
保護されればつかまれば
私はヒトでいられるだろう

それでもなお
私は私が恐ろしい
どうか閉じ込めて欲しいと
大きな病院へけ込んだ
医者は私の話に答えた
ここには入らない方が良い
あなたはまだ大丈夫
涙ぐましい努力をしている

医者の言葉に
涙がせきを切りあふれた
声もなく
大量の涙が噴出した
私はまだ狂人には遠いのか
これでもまだ不足なのか
ホッともしたが
絶望が大きかった

私は狂人にはなりきれない
どれほど苦しくとも
ヒトであることをやめられない
解放されることはないのか
頭の中を攻撃的な妄想がめぐ
絶叫を放つ寸前で
もがき続けて疲れているのに
狂う資格がないというのか

眠り続け
嘆き続け
目を覚まして辿たどり着いた
この気持ちが諦観ていかん

生も死も諦めて
狂うことも諦めて
何もかもを諦めた
こだわりもプライドも
過去も未来も諦めた

それなのに

どうしても母が邪魔をする
扉を叩いて出てこいとおど
扉の下から手紙を入れて
罵詈雑言ばりぞうごんを浴びせて去った

手紙はまるで優しい母の
温かな言葉のオンパレード
可笑おかしいよ
可笑おかしいな
こんなに心がない手紙

ここには母の姿も声も
全く存在していない
知らない人からの手紙のようで
知らない人への手紙のようで

馬鹿馬鹿しくって
不意に正気が戻ってきた
この手紙は証拠品
母にとってのアリバイ作り
そんなものは燃やしてしまえ
こんなものにだまされやしない
他人が見たら確実に
優しいお母さんだねと言う
そんなはかりごとは潰してしまえ

私をここまで追い詰めた
犯人の一人は母であり
罪が重いのも母であり
私の魂を惨殺ざんさつしたのも
私の頭を坊主にしたのも
直接的間接的に母なのだ

私が結局壊したいのは
母であり父であり
過酷な記憶そのものだ
私が殺したいのは私
私の記憶を殺したい

坊主になった頭は軽い
記憶も髪と同様に
もしも好きに切れたなら
心が軽くなるだろう
知らない私になれるだろう
知らない私は知らない場所で
幸せな心地になれるだろうか

白紙に戻して
生き直せるのか
狂気なんて知らないままで
ふんわり暮らし笑えるだろうか
知らないベッドに横たわり
やさしい夢を見られるか

涙ぐましい私の努力は
いつかどこかで報われるのか