詩蒐はまだ終わらない

 詩というカタチで、呟き、叫び、疾る (再びコチラに引っ越しました)

生贄の家出

不調で寝込んでいた私
いつものように父は蹴った
いつもと違っていたことは
私が父を蹴ったこと

殺されるだろうと思ったが
何故か父は怒鳴っただけで
「出て行けっ」と
怒鳴っただけで

「わかりました」
小さなバッグひとつで家を出た
財布に千円と小銭が少し
高校卒業の二日後だった

私は堂々と家を出た
友人の家に泊まってから
住み込みの職を得て
さっさと家から遠くへ行った

それから数日
何故か母が家を出たと言う
妹を連れて別居したと言う
お前のためだと母は言った

私の帰る場所を作るため
母は家を出たと言う
お金がなくて食事は出前で
妹が可哀想だと言う

嘘ばかり
母はいつも嘘ばかりつく
帰って来いとは決して言わず
お前のせいだと責め立てる

本当は
私がいないと母が蹴られる
ひょっとすると妹も蹴られる
生贄いけにえの羊に逃げられた

お母さん
そうでしょう
私が逃げると自分が危険
可愛い末っ子が危険

悪い出来事は私のせい
それは母の弱さなのか
母は私にみつきまくる
それは母の甘えなのか

十代の私に重すぎる荷物
それは母と妹の人生
自分が生き延びるだけで
寝床を確保するのに必死で

外で明かした夜もある
歩いて過ごした夜もある
雨宿りするふりをして
実は行き場がなかっただけで

色んな物をを諦めて
命だけを繋いでた
それでもあなたは責めるのか
それでもあなたは叩くのか

私は言われた通り家を出た
背筋を伸ばして家を出た
夜逃げのように家を出て
勝手に怯えて家を出て
八つ当たりとは滑稽だ

私を生贄にして過ごしてた
あなたの都合
あなたの怠慢
高慢で傲慢なあなたの失敗

生贄の羊
母が父に差し出す羊
祭壇から下ろして匿い
連れて逃げるのが
あなたの義務だった

自力で逃げた子羊は
二度と祭壇には上らない