詩蒐はまだ終わらない

 詩というカタチで、呟き、叫び、疾る (再びコチラに引っ越しました)

捨てられて拐われて

その日は突然やってきた

両親と三人で住むことになる
言われなかったが感じとった
ばあちゃんから引き離される
どこかに連れていかれると

わたしは押入れに隠れ
布団の中に潜り込んだ
けれどばあちゃんは知っている
いつものわたしの隠れ家を

怖い顔のばあちゃんが
わたしを無理やり連れ出した
父と母に渡された

夏の空は青く高く
エンジンをかけた父の車が
ハレーションして見えるほど
日差しが強くてまぶしかった

後部座席に私を乗せて
車はゆるゆる走り出す
後ろのガラスの向こうを見れば
道の真ん中にばあちゃんがいた

ずっと手を振るばあちゃんが
段々小さくなっていく
わたしは涙を目に溜めて
声に出さずに叫んでいた

ばあちゃん
ばあちゃん
ばあちゃん

何度も何度も
声に出さずに叫んでいた
本当は大声で叫びたかった
車を降りて駆け寄りたかった

見えなくなるまで
ばあちゃんは手を振った
わたしは魂で叫び続けた

六歳の夏
祖母に捨てられ
両親にさらわれた

大人はみんな勝手なもので
わたしを捨てたり拾ったり
けれどもわたしが欲しい愛は
決して与えてくれやしない

機嫌の良い時に構うだけ
気まぐれに物をあてがうだけ
必要なものは望むものは
決して与えてくれやしない

幾度も捨てたり拾ったり
打ったり蹴ったり踏んづけたり
食事をさせず縛り付け
洗脳しようと躍起やっきになる

ある日の夕方雷が光った
わたしは家で一人ぼっちで
雷鳴が怖くて泣いていた

ばあちゃん
ばあちゃん

助けて欲しくて電話をしたが
毛布をかぶって寝ていなさい
ばあちゃんの声が迷惑そうで
わたしはハッキリ悟ったのだ

やっぱり私は捨てられたんだ

高い子守代が目的で
お前の面倒を見ていただけ
母がわたしに言う通り
祖母はわたしを愛していない

六歳の小さなわたしは
孤独の淵を覗いていた
自分の心の穴を見た
深くて暗くて無音だった

青く高い夏の空
夕立に雷鳴
小さなわたしが泣いている

夏の空は悲しくて
夕立は孤独を連れてくる
小さなわたしが泣いている

小さなわたしが震えている