詩蒐はまだ終わらない

 詩というカタチで、呟き、叫び、疾る (再びコチラに引っ越しました)

我慢するしかなかった

いつもお腹が空いていた
でもそれを主張してはならない
食欲は隠さねばならない
何故だかそう思っていた

離乳食になったとき
私は既に遠慮をしていた
祖母や他の大人の機嫌が
私の最優先事項だった

ぼんやりと思い出す

祖母の左ひざに乗っていた
みんながご飯を食べていて
私のご飯がないのは何故か
お皿の煮魚を見つめていた

祖母が食うかと私に聞いた
私は小さくうなずいて
初めて食べる白い身を
ほぐす箸先はしさきを見つめていた

魚は祖母の口に入った
よくんで手に吐き出すと
私にそれを差し出した
衝撃的な事件だった

私はそれを食べたくなかった
けれども食べなくてはならない
気持ち悪いのを我慢して
決死の覚悟で魚を食べた

魚はパサパサしていた
祖母の口の臭いが移り
味も全く分からない
気持ちは悪いが飲み込んだ

食うかと再度祖母が問う
私は首を横に振り
空腹にえる覚悟をした
それでも祖母が好きだった

後年母がこう言った
欲しいものを欲しいと言えない
祖母がお前を甘やかしたから
欲しがる前に与えたから

それは大きな間違いだ
どれほど欲しいと思っても
私は何も言えなかった
嫌われたくなかったのだ

ミニカー 絵本 レゴブロック
欲しいものは沢山あった
ジャムパン キャンディ お子様ランチ
食べたいものも沢山あった

どれも私はもらえなかった

保証されていたものは
朝の卵かけご飯だけ
昼食はなく夕食は不明
おやつだけが時々あった

だから
私がたまたま食べていた
板チョコレートは代替品
ご飯があったら良かったのに

母も父も気づかなかった
私がひどくせてた理由
わがままだからと決めつけて
私の気持ちは置き去りで

誰のおかげでめしが食えるか
そう言われたら
何ひとつ食べられなくなる
心もせ細っていた

せたくて拒食症なわけじゃない
食べる機会を失って
食べることを責められて
なってしまった拒食症

本当は欲しかったもの
本当は食べたかったもの
沢山沢山あったけど
私は言葉にできなかった

何もかもが大人次第
大人のご機嫌次第なのだ
何もできない小さなわたしは
我慢するしかなかったのだ