詩蒐はまだ終わらない

 詩というカタチで、呟き、叫び、疾る (再びコチラに引っ越しました)

冷たい心

台所で座り込んだ母
その髪を乱暴に掴み
喉元にナイフを突きつける父

私は隣の部屋から様子を見ていた
無言で受話器に手をかけて
少しでも切ったら
警察を呼ぶつもりだった

心は静まり返っていた
不思議なくらい冷えていた

殺るなら殺ればいい
私は正当な手続きを取るだけだ
母がどうなろうと構わない
父が何をうしなおうと知ったことではない

父が私をひどく殴ると
時々母が止めに入って殴られた

「どうだ、母親が代わりにやられて」
「いい気味だと思ってるのか」
父は私を言葉でいたぶる

いい気味だとは思わないが
感謝の気持ちも全くない

母は私を庇ってはいない
父を犯罪者にしないため
虐待を世間に知られた時に
自分がかばった事実を作るため

母は後で私をののし
お前のせいで殴られた
お前さえいなければ
お前がお前がお前が

悲しくもない
傷つきもしない
こんなのは慣れっこだ
だけどうんざりしている

だから
父が母を殺しても
母が父を返り討ちにしても
私は別にどうでもいい

殺人犯の娘になろうが
傷害事件に巻き込まれようが
世間に何を言われようが
私は別にどうでもいい

いつも看守にいたぶられ
抵抗できない囚人は
看守が死んでも構わない
脱獄のチャンスが来るだけで

たとえ先が地獄でも
この地獄より悪いのか
行ってみなけりゃわからない

だから
父のナイフが母を切っても
私は一向に構わないのだ

私の心は冷え切って
死んでいるのも同然だった