詩蒐はまだ終わらない

 詩というカタチで、呟き、叫び、疾る (再びコチラに引っ越しました)

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凍りきった皮肉

毒を帯びた言葉は霙 耳から皮膚から沁み込んで 日毎に体が重くなる 母の言葉が沁み込んで 夜毎に心を軋ませる 凍えて斃れた私の髪を 尚も母が毟るから 悪鬼の貌で毟るから 窖に逃げ込み鎧戸を閉めた その寸前 凍った心が皮肉を零した お母さん、 あなたはど…

君の幻に僕は

寒さがやって来たばかりなのに 君はもう春の中に生きている かじかんだ指で触れようとしても 君は消えて闇があるだけで 凍えた心を温めるには 幻の君は透き通って 悲しいほどに透き通って 涙の熱さを僕に知らせるんだ #フォエム52 「小春」

真夜中の散歩者

夜の帳が緩やかに降りて 優しい闇が訪れる 樹の葉も鳥も声を密めて 蕾が開く音が聞こえそうなほど 深夜散歩に出る君の足音は気配だけ夜の声しか聞けない君に 話し相手はいるのだろうか #詩コン 「声」

張り巡らされた幻の糸

それは幻想 手を繋いでいても 隣同士で寄り添っても どれほど言葉を重ねても 分かり合えないことが多くて 誤解が誤解を生み出すから 本当は誰もがひとりぼっち 皆疑うこともなく 現の中で幻の糸を見ている #フォエム52 「つながり」

不用意な筆使い

真っ白な半紙の真ん中へ 筆先からポタリと落ちた薄墨が ボワボワと広がっていく 灰紫の滲みが侵食していく幾度も繰り返されて 心はふやけて破れた 無邪気な悪意の重なりに 狡猾な人々の疑わしき言葉に破れた心は修復不能で べしょりと重い灰紫の塊になり 胃…

その人は逝ってしまった

知らぬ間に逝ってしまった人 思い出は波に浚われた 小高い山の墓だけが残り その土の下に居ると思えず取り残された淋しさ 叶わなかった再会 どれ程痛みを感じても 黙って涙を零すだけで本当はその名を叫びたかった 心では叫び続けていた 見送れなかった苦し…

存在しない私の願い

人の記憶は変容する 人の数だけ事実が出来て 相違を示せば争いとなり 放置すれば貶められる原形を保持しない主観的事実 共有されず消失する客観的事実 争いには疲れた 愚弄される事には慣れず私は存在しない そういう事にして欲しい 忘れ去られる事だけが た…

再生する生命

乾き割れた灰色の土 樹々は根から折れて倒れ 建物はシートの下で朽ちた 獣さえ居なくなって久しいそれでも今澄んで晴れ渡った空 涼風が海から吹き上げ 蒼暗い大気は払われた足元を見よ其処彼処に大地を捲って 若い翠が芽吹いた 折れた樹にも翠が宿るさあ生命…

はぐれ雲は夜を彷徨う

バイパス沿いを歩き続け夜を越えた コートのフードを被っても 夜気は頰を刺すほどに冷たい開けた視界に灰色の田園と山並 まばらな木立のシルエット 一筋ほのかに紫色の雲 昨日と変わらぬ夜明け温かい寝ぐらを探して 拾ってくれる誰かを求めて 夜を歩いていた…

天使と鶏とケンタウロスと

天使の絵が怖かった 肩甲骨が変形して皮膚を破って 骨は白色レグホンの羽を纏って 微笑の分だけケンタウロスよりも ミノタウロスよりも怖かった 私の骨が飛び出たらと慄いた#フォエム52 「つばさ」

冷たい夜に

雨音よりずっと遠いところで 月は今日も光っているのだろう その笑顔のずっと向こうの日々に あなたは何を置いて来たのだろう あの頃の涙は乾いたろうか 真冬の雨が指先を震わすように 私は今も月が見えない雨の夜更けに 涙の冷たさに凍えている#フォエム52 …

パラドックス

誰もが私を忘れ去り 私の記憶は消去され 物証も消え失せる そんな望みが叶えられても どうせ失った物を求める 雨の日に晴天を想い 晴れた日に雨を望む 花曇りは中途半端で 天気雨は美し過ぎる かの人の温もりは手放さず かの人のを忘れるなんて 矛盾した望み…

辿り着いた場所

押し付けられた運命なんて 蹴散らして駆け抜けた 冷たい雨に凍えても 雲の向こう側を睨みつけて限界に倒れ見えた風景 息を整えて見た世界は 色彩に溢れ美しく差し伸べられた手の温もりに 知らず心は溶けていた この心地を含めて運命なら もう身を任せてもい…

鱗一枚の涙

薄暮のビルの狭間から 白い骨の魚たちが泳ぎ出す ゆらゆらと街に透けて 私もまた軀から抜け出て 幽鬼のように街に揺れる沸騰する怒り 凍てつく孤独 切り刻まれた痛み 何もかもが消えて 揺れるだけで 漂うだけでただ 鱗一枚の涙が熱く零れた#フォエム52 「温…

夜の底で

夜に澱んだ私の皮膚は 硬く鈍くなったので あなたが吐いた白い気体が 溜め息なのか煙なのか迷うけれど 答えは知らない方がいい#フォエム52 「白い息」

女の子を諦めた日

大好きだった 紺地に白い水玉のワンピース 肩が少し膨らんで可愛かったのに 写真の私は男の子みたいで ちっとも似合っていなかった 女の子になる選択肢はあったけれど 麦わら帽子と半ズボンを選んだ 男の子になれたら両親が ちょっとは喜ぶと思ったんだ#フォ…

あの海へ

立ち止まって靴紐を結び直した 涼風が吹き抜けていく 懐かしい声は空耳か 向かう先を見据えて また走り出す あなたの面影を求めて あなたの記憶をよすがに 私はあの海へ向かっている 既にあなたがいないとしても#フォエム52 「声援」

迫り来る不安

夜の闇には優しさがある 怖いものを隠してくれる 朝に夕に立ち込める霧は 四方八方から迫ってくる 危険なものを連れてくる 得体の知れない怪しい影 反射して数もわからない 音もなく何かが忍び寄る 切迫する不安#フォエム52 「霧」

いたいけな子供でいられずに

変わらないものなどない 昔を懐かしむ友はいない 大切な思い出だってない 地球儀を回しても 希望の光は見えず アルバムを捲っても 愛のある過去はなく 子供の容をした私は 憂いを湛えた眼をしてる 傍に取って置きたい 輝く日々などありはしない #フォエム52 …

わたし、殺しました

わたし、殺しました たぶん、殺しました 小さな可哀想な女の子を いつも震えていたあの子 殺して、忘れていました 近頃夢に見ます 怯えていたあの子は おそらく、私 殺したはずの、私 けれど真夜中 啜り泣く声が 耳の奥で聞こえるのです#フォエム52 「告白」

果実蝙蝠の願い

花も宝石もドレスも要らない 寝床を下さい その手の中の 甘い香りの果実で 臆病で幼い獣じみた私を おびき寄せて捕まえて下さい ときどきは慰めに 煌めく果肉と甘い滴を 優しい指で与えて下さい 飲み干せば私は幸せ気分 その腕の中で眠ります 身を預けて眠り…

まがい物の存在意義

屋上庭園が増えてきて 空撮すれば緑がいっぱい 小さな草原に小さな木立 どれもまがい物だから 風雨の日は心許ない それでも緑は美しい #フォエム52 「未来」

連続する刹那

未だ来ていない刻を思うような 余裕はなくて 漠然と不安を抱えて 倒れるように眠る人々 明日の朝また起きて 必死に走り回る1日 その刹那の連なりが 私たちを未来へ押し出す ベルトコンベアに並べられ#フォエム52 「未来」

夏草の向こう

青々と茂る夏草を掻き分け 私だけの入江に行く 秘密の抜け道を通って 崖に囲まれた静かな海 夕暮れ時に家へ帰るが 誰も私を探しちゃいない だから時々黙って出掛けた 生い茂る夏草に隠れた入江で 孤独に泣きそうな私は あのとき五歳だった

あの夏に戻って

南の島の小さな家 窓を開ければ風が通り 畳に寝転ぶ私の前髪を撫でる さやさやと吹く南風は 海の上で冷やされて 波音も涼やかに連れてくる 誰かが庭で三線を鳴らす 子どもに帰った夢を見た そよ風に微睡む夢だった #フォエム52

雑踏に眩む

人混みの中 少しズレた時間軸に囚われる 人々が行き交う駅前 立ち尽くす私に影はない 私だけが硝子鉢の金魚のよう 生温い水の中 揺らめく街に眩み 息苦しくなり沈んでいく 目の前を幾つもの革靴が過ぎる 緩慢に流れる時間の中 私は死にゆく金魚に 死にゆく赤…

孤独な熱帯夜に

熱帯夜にエアコンも疲弊している 過密な人口が生み出す熱気 ビルの灯りは煌々としているのに ひとりぼっちの眠れないわたし達 蒸し暑いジャングルの中 群れからはぐれたフラミンゴは 不眠症に悩むだろうか #フォエム52

望みを持たざる者

絶望という名に相応しい気持ちの中 ご大層な望みなどあったのか 皮肉屋が耳の奥で呟いた 自分が滑稽で笑うしかなかった #フォエム52

強欲が輝いて降るときに

使い古された衛星が 宇宙ゴミとなって そらを廻るいつか地球へ落ちてくる その燃える一瞬において 流れ星となる私たちは強欲で無邪気に 手に入れた叡智を試したがるいつか大量の宇宙ゴミが 流れ星となり降ってきて 私たちは苦しむかもしれない #フォエム52

消し去りたい疵

つらい記憶を消し去ったなら 悪夢に怯える夜は消えるだろうか 新しい私になれるだろうかこの苦しみから逃れられるなら 美しい思い出も 甘やかな約束さえも 失って構わない #フォエム52