詩蒐はまだ終わらない

 詩というカタチで、呟き、叫び、疾る (再びコチラに引っ越しました)

虐げられた子が詩う

食す権利

飢餓状態のおんなの子 肉が薄いから 吹く風は骨に当たり音がする キシキシキシキシキッキッキッ目はギラついてハイテンション 時折倒れて眠りを貪り 突然裸足で道路を疾走する深夜嬌声をあげ笑い転げて 涙少々 乾きすぎた皮膚は水を吸わない チリチリヒリヒ…

嵐を超えろ

暴力は嵐みたいに始まって わたしは人形になるだから痛くない だから泣かない だから死なない 多分死なない 多分怖くない 怖くない何も感じないんだ喉の奥にかすかに 小さなわたしが生きている勇敢ないのちが 強情ないのちが 狡猾ないのちが 確かにある ここ…

いのちがけの策略

上手に殴られる 骨を折られないために転がったら身体を丸める 内臓を守るために 全身の力を抜くぐったりして見えるよう泣き叫ばない 目を開けて何も見ないある程度の手応え 圧倒的な優位性 殺人者になるリスクそれを わたしは父に与えてやる生き延びるため …

口癖

ごめんなさい ごめんなさい 泣きながら何度も叫ぶ意味はない ただの口癖 小さい頃の わたしの口癖でもね わかったよごめんなさいって 泣き叫ぶと お父さんが興奮する事 痛みが余計に増える事 わたしの心が すり減っていく事窓の向こうの青空を見つめ 死んだ…

もっと狂気を

充分狂っているだろう いやいやまだまだ 欲望の底が見えないんだ 狂気を抱えて隠してるんだ 単純に言えば 絶叫の衝動 キャッホーって叫びながら あいつもあいつもあいつもあいつも 陽気に喉を掻き切ってやってさ スキップしながら 油を撒いて 歌って踊って …

誰が悲劇のヒロインか

父の怒声は大きな音で 雷鳴みたいで中身が聞こえぬ頭はボコボコこぶだらけ 骨が床にゴツゴツ当たり 髪がブチブチむしられて 三半規管が拒絶反応 時々吐いて蹴り上げられる母の呪文は低い声 耳から入って内から蝕む 心をジワジワ侵食する 神経繊維をプツプツ…

パンツをください

お母さん あなたが毎年支給してくれた 五枚の真っ白なグンゼのパンツ ウェストにはマジックで 大きく書かれたフルネームブカブカで厚手の白いパンツ 高価だっていうけどね わたしは安くて構わないから ジャストサイズのが欲しかった痩せこけたわたしの尻はペ…

恐るべきこと

あなたが暴力を振るったとして 相手が黙って耐えたとしたら あなたは相当に怖れるべきです 用心に用心を重ねるべきです他人ならば 後をつけられているかもしれません 真夜中火だるまになるかもしれません学生ならば 食べるものに気をつけましょう 給食には毒…

冷蔵庫は魔境

母の冷蔵庫はいつもいっぱい 冷蔵室も野菜室も冷凍庫も ぎっしり何かが詰まってるなのにどうして 食べられるものがないの なのにどうして それを調理するのわたしは時々 ご飯を食べて吐きました それを見て 母はせせら笑うのです 同じものを食べたのに 変な…

生と死の機会損失

死について考えた 生きる意味を考えた 自死の後先を考えた 殺害の損益を考えた何年間も考えたけれど 答えなんか出なかった愛されず 愛する人もなく 無価値だと言われ 死んでしまえと罵(ののし)られ生きる苦しさと 死ぬ苦しさを 天秤にかければ 私が死ぬの…

凶暴な種

わたしは欺(あざむ)いている人はわたしを お人好しとか 人畜無害とか そんな風に感じるらしいまた別の人は 優しい人とか 懐(ふところ)が深いとか 評してくれたりもするわたしは必死に隠している凶暴なわたし 衝動的な殺意 獣のような咆哮(ほうこう) 放…

猜疑心の鎧

父の怒鳴り声は大きな音 雷鳴のようで内容はない頭がボコボコになるような 背骨がギシギシいうような 髪がブチブチ切れるような痛みは内側へ向かいながら 小さくなっていく 脳だけは揺れたままで母の呪文は低い声で 耳から入って内側から蝕(むしば)む心を…

理由などというもの

物事には理由がある 理由 原因 要因 きっかけ なんでもいいけど それらは一つじゃないんだ実の親が子を痛めつける 何故どうしてと人々は問うそれはね 貧しくて苦しかったから それはね 育てるのが辛かったから それはね そのまた親にやられていたから それは…

逃走の手段

押入れに閉じ込められる 布団があったかいから 気持ちが良くて 潜りこんで眠ってしまった閉め出された冬の夜 寒いから犬小屋に入った 大きな犬があったかくて 寄りかかって眠ってしまったある日は夕飯を抜かれた 怒られてまで食べたくないから 水だけ飲んで…

世間の掟

顔の左半分が 青黒く腫(は)れ上がり 左目が開かず視界不良鏡の中の私の顔は 試合に負けた ボクサー以上の異形(いぎょう)昨晩父に殴られた 学校に行けなくしてやると 集中砲火を浴びたっけ 理由なんか分からない母が夜中に氷で冷やせと ヒステリーを起こ…

防御の一手

母が言った 「怖気(おぞけ)が走るわ陰気臭い子」母が言った 「あんたは整形が必要ね」母が言った 「裏口入学の準備ができた」いつか誰かが歌ってた 僕が僕であるためにって ロマンチストで感傷的 獣臭(けものしゅう)のしない歌私が私であるために 殺られ…

虐待の後遺症

すっかり忘れていたのだ 怯(おび)えていた日々 孤独だった子供 憎しみに震えた夜獲得した自由に溺れて すっかり忘れていたのだそれは突然やってきた 体が硬直して動けず 意識は記憶の中の自分へ飛んだその時私は再び 蹴られ 殴られ 髪を掴(つか)まれて …

獣の執念

踏切を渡る途中で立ち止まる 歩道橋の上から道路を見下ろす ホームで通過列車に引き寄せられる 包丁を握りしめて首に手を当てる ベランダの向こうへ意識が走り出す現実に引き戻され 鞄(かばん)を抱きしめて しゃがみこむ 鼓動が乱れる自死は考えていない …

一夜だけの逃避行

小さな駅前の小さなロータリー 一晩中営業しているドーナツ店 郊外の街の午前3時は酷く静かだベンチで時間をやり過ごす 指がかじかむほどの冷気 じきに冬がくるのだろう制服姿をコートに包み 植え込みで人目を避ける 警察官に気づかれぬよう隣のベンチに二…

泣けない子供

涼しい初夏のことだった 日差しはキラキラして 砂利を撒(ま)いた庭は乾いて私の脚は曲がっていて やっと歩けたのは三歳で 十数歩進むと必ず転んだ私はひどく泣き虫で あの日も転んで私は泣いた 膝を擦り剥き 手には砂利が食い込んだばあちゃんの足が目の前…

震えるヤマアラシ

亀の子だわしで 背中を強く擦(こす)られていた 歯を食いしばり 痛みをこらえ 無数の傷が赤く腫れた問題集を解いていると 斜め後ろに立って 見張られた 間違えると叩かれる 鉛筆を持つ手が震えた猫背になると プラスチックの定規を 乱暴に背中に差し込まれ…

夢の見方

夢が何かわからなかった 寝ている間の夢は知っている それはそれは怖いもの お母さんが追いかけてくる大きくなったら何になる 将来の夢はなんですか幼稚園の先生は残酷だった そんなことを子供に問うとは なんと惨(ひど)い質問をするのかお医者さんになり…

母のニオイ

お母さん 実はね お母さんのニオイって 気持ち悪くて 吐き気がするのです砂糖入りの牛乳が 少し腐ったようなニオイお母さんも わたしのこと 気持ち悪いと言いますね 顔も声も嫌いだと 怖気(おぞけ)が走ると言いますねだからこれはお互い様あなたが産んだ四…

絶対的少数派

集合体の中のわたしは いつだって少数派 物の見方が風変わり 考える子供は生意気で家の中でも少数派 一度読んでも覚えないのに 三歳の事を覚えているとは 頭が悪くてしつこい性質(たち)だ考える暇があるならば 覚えたほうが早いのに メモを取るのをやめな…

冷たい心

台所で座り込んだ母 その髪を乱暴に掴み 喉元にナイフを突きつける父私は隣の部屋から様子を見ていた 無言で受話器に手をかけて 少しでも切ったら 警察を呼ぶつもりだった心は静まり返っていた 不思議なくらい冷えていた殺るなら殺ればいい 私は正当な手続き…

捨てられて拐われて

その日は突然やってきた両親と三人で住むことになる 言われなかったが感じとった ばあちゃんから引き離される どこかに連れていかれるとわたしは押入れに隠れ 布団の中に潜り込んだ けれどばあちゃんは知っている いつものわたしの隠れ家を怖い顔のばあちゃ…

男の子だったなら

男の子に生まれなかったのは 私の責任なのでしょうか母が娘は嫌だと言いました 父は女かと落胆しました 親類中が男だったらと残念がって小学校の入学式はパンツスーツで 男の子みたいな短い髪は モダンすぎて田舎じゃ浮いた 赤いランドセルが不似合いだった…

生贄の家出

不調で寝込んでいた私 いつものように父は蹴った いつもと違っていたことは 私が父を蹴ったこと殺されるだろうと思ったが 何故か父は怒鳴っただけで 「出て行けっ」と 怒鳴っただけで「わかりました」 小さなバッグひとつで家を出た 財布に千円と小銭が少し …

我慢するしかなかった

いつもお腹が空いていた でもそれを主張してはならない 食欲は隠さねばならない 何故だかそう思っていた離乳食になったとき 私は既に遠慮をしていた 祖母や他の大人の機嫌が 私の最優先事項だったぼんやりと思い出す祖母の左膝(ひざ)に乗っていた みんなが…

知らない私を想って

死体のふりして ベッドに横たわっていた 何故かしら 駆(か)けずり回りたい衝動 何もかも壊して回りたい 暴力的な衝動が 私の内から湧き上がり 部屋の中をピョンピョン跳(は)ねた自分があまりに恐ろしく 私は自分の髪を切った 坊主になるまで切り続けた …