詩蒐はまだ終わらない

 詩というカタチで、呟き、叫び、疾る (再びコチラに引っ越しました)

2019-04-27から1日間の記事一覧

森とパステルと憧憬と

朝露が光る木苺の実 蕗の茎は半透明な緑 田んぼ一面の蓮華草 白詰草で作る髪飾り ナズナのベルが鳴る森で見つけた家には 井戸とランプと木炭 窓を覗き逢ったのは 私より年上の女の子 赤い綺麗な爪をしてスケッチブックの絵 美しい色のパステル 横顔が綺麗な…

冷蔵庫は魔境

母の冷蔵庫はいつもいっぱい 冷蔵室も野菜室も冷凍庫も ぎっしり何かが詰まってるなのにどうして 食べられるものがないの なのにどうして それを調理するのわたしは時々 ご飯を食べて吐きました それを見て 母はせせら笑うのです 同じものを食べたのに 変な…

しあわせの証

幸せとは何者か わからないから捜しました人はわたしを 羨ましいといいます 悩みがなさそうで 幸せそうといいますわたしは悩みを知りません わたしは幸せも知りません考える 迷う 保留する それしか知らないのです生きのびることに集中して 脳も皮膚も産毛の…

生と死の機会損失

死について考えた 生きる意味を考えた 自死の後先を考えた 殺害の損益を考えた何年間も考えたけれど 答えなんか出なかった愛されず 愛する人もなく 無価値だと言われ 死んでしまえと罵(ののし)られ生きる苦しさと 死ぬ苦しさを 天秤にかければ 私が死ぬの…

凶暴な種

わたしは欺(あざむ)いている人はわたしを お人好しとか 人畜無害とか そんな風に感じるらしいまた別の人は 優しい人とか 懐(ふところ)が深いとか 評してくれたりもするわたしは必死に隠している凶暴なわたし 衝動的な殺意 獣のような咆哮(ほうこう) 放…

猜疑心の鎧

父の怒鳴り声は大きな音 雷鳴のようで内容はない頭がボコボコになるような 背骨がギシギシいうような 髪がブチブチ切れるような痛みは内側へ向かいながら 小さくなっていく 脳だけは揺れたままで母の呪文は低い声で 耳から入って内側から蝕(むしば)む心を…

理由などというもの

物事には理由がある 理由 原因 要因 きっかけ なんでもいいけど それらは一つじゃないんだ実の親が子を痛めつける 何故どうしてと人々は問うそれはね 貧しくて苦しかったから それはね 育てるのが辛かったから それはね そのまた親にやられていたから それは…

逃走の手段

押入れに閉じ込められる 布団があったかいから 気持ちが良くて 潜りこんで眠ってしまった閉め出された冬の夜 寒いから犬小屋に入った 大きな犬があったかくて 寄りかかって眠ってしまったある日は夕飯を抜かれた 怒られてまで食べたくないから 水だけ飲んで…

世間の掟

顔の左半分が 青黒く腫(は)れ上がり 左目が開かず視界不良鏡の中の私の顔は 試合に負けた ボクサー以上の異形(いぎょう)昨晩父に殴られた 学校に行けなくしてやると 集中砲火を浴びたっけ 理由なんか分からない母が夜中に氷で冷やせと ヒステリーを起こ…

防御の一手

母が言った 「怖気(おぞけ)が走るわ陰気臭い子」母が言った 「あんたは整形が必要ね」母が言った 「裏口入学の準備ができた」いつか誰かが歌ってた 僕が僕であるためにって ロマンチストで感傷的 獣臭(けものしゅう)のしない歌私が私であるために 殺られ…

虐待の後遺症

すっかり忘れていたのだ 怯(おび)えていた日々 孤独だった子供 憎しみに震えた夜獲得した自由に溺れて すっかり忘れていたのだそれは突然やってきた 体が硬直して動けず 意識は記憶の中の自分へ飛んだその時私は再び 蹴られ 殴られ 髪を掴(つか)まれて …

獣の執念

踏切を渡る途中で立ち止まる 歩道橋の上から道路を見下ろす ホームで通過列車に引き寄せられる 包丁を握りしめて首に手を当てる ベランダの向こうへ意識が走り出す現実に引き戻され 鞄(かばん)を抱きしめて しゃがみこむ 鼓動が乱れる自死は考えていない …

一夜だけの逃避行

小さな駅前の小さなロータリー 一晩中営業しているドーナツ店 郊外の街の午前3時は酷く静かだベンチで時間をやり過ごす 指がかじかむほどの冷気 じきに冬がくるのだろう制服姿をコートに包み 植え込みで人目を避ける 警察官に気づかれぬよう隣のベンチに二…

泣けない子供

涼しい初夏のことだった 日差しはキラキラして 砂利を撒(ま)いた庭は乾いて私の脚は曲がっていて やっと歩けたのは三歳で 十数歩進むと必ず転んだ私はひどく泣き虫で あの日も転んで私は泣いた 膝を擦り剥き 手には砂利が食い込んだばあちゃんの足が目の前…