時の流れに抗って 呑み込まれ足掻いて 身体は時代を超えてしまった 感覚だけが遠く遠く 半世紀近い過去の 窪みに取り残されて ひとりぼっちでしがみついた 皆が忘れたその時間に #詩コン 「流」
何色とも相容れない 頑強な白い私 あなたの色は温かく 私を白いまま丸く包みこみ 安心をくれたから 私は白い猫になった 伸びてあくびをすれば 出来た隙間に入り込み 上手に喉を撫でたりする この頃じゃ 尻尾の先が滲んだみたいだ #詩人の本懐 「混色」
ゼロかイチか そんな生き方ができたら 情動だの情欲だの 扱いにくいものに 踊らされずにすむのに 数値化すら出来ない何かが いつも干渉してくるから 頭の中が混沌として 眠りすぎたり眠れなかったり 私たちの夜は大抵悩ましい #詩人の本懐 「有無」
線路に降りた白い杖の人 ラッシュアワーのホーム 見ていた誰かは人波に呑まれ レールに寝転んだその人に 気付いた誰かの叫びは喧騒の中 電車のブレーキ音 悲鳴と空白の時間 ブルーシートと狂騒 なぜか いくつものシャッター音 無責任な興奮 爆ぜた命の残骸の…
のたうち回る苦しみの表現 床を全力で踏みつける怒り そんな踊りを見せられても 心に迫ってきやしない 静の表現の方が鬼気迫る 動きを極限まで削ぎおとし 幽鬼の佇まいに背中がぞわり 苦しみや怒りとはそんなものだろう #詩人の本懐 「演舞」